みどりの旅路

実務と研究から自然と文化をたどる共生論・多様性論

チコちゃん 再び雑草について考える!

先週(2026年2月27日)放映のNHK 総合テレビ「チコちゃんに叱られる!」の疑問のひとつは、「なぜ草むしりをしてもまた雑草が生えてくるの?」だった。

答えは、「草むしりをすることにより撹乱された土の中に眠っていた新たな種(土壌シードバンク)が芽生えるから」というものだ。

植物に限らず、動物でも、それまで優勢だった種がいなくなれば、新たな種が取って代わる、つまり「重しが取れれば下が元気になる」というのは、生態系の慣わしだ。

人間の社会でもそうだけれどもね!

ところで、畑仕事や草花栽培についての多くのブログを拝見しているが、皆さんも雑草には困っているのでは。

私もこの歳になって週一だけの慣れない畑仕事をしているけど、やはりこたえるのは雑草取りだ。

ホトケノザとオオイヌノフグリ

ホトケノザやオオイヌノフグリのような地表面の雑草は鎌で削ぎ取ればなんとかなるが、やっかいなのはドクダミやチガヤ(?)、スギナ(つくし)など。地中深く根を張り、ちぎれた根からも繁殖するから手に負えない。

ついつい除草剤を使いたくなるが、使わず頑固に土を掘り起こして根を除去している。

 

掘り上げた雑草の根
分かりにくいが、右の塊からドクダミ、チガヤ(?)、スギナ

 

除草剤と遺伝子組換え作物

農民の大敵である雑草対策で、除草剤を使用してもなかなか効果は出ない。しかし、除草剤の効き目を高めるほど、肝心の作物にまで影響が出てしまう。

そこで、米国のグローバル化学企業モンサント社が開発したのが、強力な除草剤ラウンドアップ(成分名グリホサート)だ。

これは、農作物の大敵である雑草対策の除草剤開発において、雑草だけを枯らしてしまう選択性の除草剤開発が困難なため、すべての植物を枯らす強力な除草剤を開発したものだ。

しかし作物も枯れては元も子もない。作物の方は、除草剤の影響を受けない遺伝子を改変した除草剤耐性農作物品種を同時に開発した。

この除草剤耐性農作物とラウンドアップ除草剤とをセットにして販売して、利益を得ようとするビジネスモデルの一種でもある。

現在では、この除草剤耐性作物は、世界的な農業従事者の減少などを受けて、トウモロコシ、小麦、米、ダイズ、綿花、ナタネ、ジャガイモなど多品種に及び、作付面積も世界中で広がっている。

(以上、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)の 第1章 現代に連なる略奪・独占と抵抗 第3節 先進国・グローバル企業と途上国の対立 「品種改良と遺伝子組換え」より。)

 

ところで、そもそも雑草って何?

以下は、過去記事「チコちゃんに叱られないよう、雑草について考える!」(2023/5/23)より一部修正して抜粋再掲。

 

2023年5月19日放映のNHK総合テレビの人気番組「チコちゃんに叱られる!」で、「雑草ってなに?」が取り上げられていた。

チコちゃんに叱られないように、雑草について考えてみたい。

 

チコちゃんの答えは・・・

「雑草ってなに?」のお答えは、「望まないところに生えているすべての草」とか。

私のブログに興味を持っていただいている読者の方々には、とっくにお分かりのことだろうと思う。

 

そう、チコちゃんの答えのとおり!

雑草(害虫なども)は、人間が勝手に役に立たないと考えたり、邪魔だと考えたりしているにすぎないのだ。

そして番組出演者が質問していたが、「同じ草でも、あるところでは雑草で、違うところに生えていたら雑草でなくなることがあるの?」という疑問が当然のごとく湧いてくる。

そのとおり!

同じ草でも、きれいな花が咲くからといって庭に植えていた植物が、繁茂しすぎて邪魔になり、突然に雑草として扱われてしまうことがあるのは、身に覚えのある方も多いだろう。

 

ドクダミは雑草?薬草?

白い花が咲くドクダミも、畑や庭、空き地、道端などでは雑草として扱われることが多い。

でも、ドクダミは名無しの雑草ではなく、ちゃんと名前を覚えられているからまだましか?

それもそのはず、ドクダミの独特の臭いの元となるデカノイルアセトアルデヒドの精油成分には殺菌作用もあり、化膿止めや皮膚炎などに効果があるとされている。

ほかにも利尿作用や便秘改善効果、血圧安定効果などもあり、「ドクダミ茶」としても古くから利用されてきた。

江戸時代に貝原益軒の著書である本草学の『大和本草』や寺島良安の類書(百科事典)『和漢三才図絵』などにも薬草としての記載がある。

現在でも、れっきとした薬草で、厚生労働省が発行する「日本薬局方」に「十薬」という生薬名で記載されている。

嫌われもののドクダミは薬草にもなる

 

雑草だけではない!

害虫の蚊やハエも、役に立つことはあるのだ。

ハエの幼虫ウジが化膿して壊死した傷口を食べて、傷の回復を早めることから、チンギス・ハーンが負傷兵士手当のために大量のウジを戦場に運んだり、現代の病院でも使用されていることは、上記の拙著でも紹介したところだ(第3章 便益と倫理を問いなおす  第2節 生物絶滅と人間 「眠れぬ夜にカの根絶を考える」参照)。

 

良いものと悪いもの?

故 坂本龍一氏は、「人間は勝手に、良い音と悪い音に分けている。公平に音を聴いた方が良い」と語っていたいた(ブログ記事「坂本龍一 街頭音採録の背後には」2023年5月13日)。

 

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そう! 雑草や害虫も、人間が勝手に分けただけなのだ。

ちなみに、坂本龍一氏は私の高校の2学年後輩、同じ作曲家の池辺晋一郎氏は5学年先輩。お二人ともお会いしたことはないし、私は音楽にはほとんど無縁。
なのにわざわざアピールするのは、正に「虎の威を借る狐」ですね。

 

多様性と多面性

こうした人間の役に立つかどうか、の前に、害虫や雑草たちも、自然界ではなくてはならない存在でもある。

人間に望まれるかどうか?

そんなの関係ないっ!

蚊やハエが鳥や魚の餌にもなって生態系を支えているのは、わかりやすい例だ。

こうして、あらゆる生物が他の生物と関わり合いながら自然界(生態系)で共に生きていることこそが、「生物多様性」なのだ。

これは、本ブログの主題のひとつでもある。

 

一方で、「(害虫など)この線引きは、科学技術の進展、生活様式(ライフスタイル)の変化、さらには倫理観の変化などによって、いつ反転してしまうかもわからない」(前掲拙著の第3章 便益と倫理を問いなおす 第2節 生物絶滅と人間 「眠れぬ夜にカの根絶を考える」参照)。

 

多くの個の存在を認める「多様性」も大事だけれども、ひとつの個も角度によって(見方によって)さまざまな価値や意味を持つ「多面性」(多義性など)も大事かと思う。

多様性と多面性は、自然界・生物だけではなく、人間社会でも真剣に考えてみる必要があるだろう。

 

「巨樹カレンダー」を進呈!!! 巨樹アンケートへご協力を!

各月に会員撮影の迫力ある巨樹写真

 

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立山登山で日本三霊山を踏破

今週のお題「山」に遅まきながら参入。
昨年はブログ更新をしていなかったので、昨夏の話で恐縮です。

昨年(2025年)7月末に立山に登山。これで、一昨年(2024年)の白山と昔登山した富士山とを合わせて、山岳信仰で有名な「日本三霊山」を踏破することができた。

三霊山の石標

 

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コースは、ポピュラーな立山黒部アルペンルート。
長野県大町の扇沢から関電トンネル電気バス(かつてはトロリーバス)で黒部湖(黒四ダム)へ。

 

関電トンネルは、立山直下を通過(見にくいが、車外右の電光掲示)

世紀のプロジェクト黒四ダムと黒部湖

さらに、ケーブルカーとロープウェイを乗り継いで、室堂へ。

雷鳥荘に宿泊して、翌日に雄山登山。

雷鳥荘から雄山方向の夕景

雄山山頂には、雄山神社峰本社が鎮座している。

雄山山頂には雄山神社峰本社が鎮座

7月下旬とはいえ、まだ残雪も。

みくりが池

氷河によって削られたとするカール地形も残り、山崎圏谷は天然記念物にも指定されている。

カール地形の山崎圏谷

 

タテヤマリンドウなど立山の名を冠した高山植物をはじめ、たくさんの高山植物を堪能することができたが、花々の写真はまたの機会に。

タテヤマリンドウ

 

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バレンタインデーにはチョコレート??

2月14日のバレンタインデーは、元々はキリスト教圏の祝祭日の一つでカード交換などが行われていたという。諸説あるが、愛する人に贈り物をする習慣もあったとか。

それが日本では、女性から愛する男性にチョコレートを贈る日になってしまった。

バレンタインチョコの仕掛け人は神戸の製菓会社モロゾフで、1930年代(昭和5年頃〜10年代)には「愛する人にチョコレートを贈りましょう」という広告を掲げた。これが、日本でバレンタインデーにチョコレートを贈る習慣の起源だというのが、有名な定説だ。

それがいつしか、「女性から男性に」となり、さらには1ヶ月後の3月14日にはチョコレートをもらった男性がお返しとして女性にプレゼントを贈る日まで現れた。こちらは、1970年代後半にマシュマロメーカーなどの菓子業界が始めたキャンペーンだというから、なんと商魂たくましいことか。

このバレンタインデーの贈り物習慣も、ジェンダー論、セクハラ・パワハラ意識などに伴って変化してきた、というか最近ではチョコレートを贈る女性が激減してきたともいう。

まあ、いずれにしても現在の私にはバレンタインデーのチョコは無縁だし、過去も職場や知人、さらには生命保険勧誘員からの”義理チョコ”の記憶だけだけど。

2年前のバレンタインデーには、「今日はバレンタインデー、チョコの話をしよう」と題したブログ記事を掲載した。ラテンアメリカから始まったチョコレートの歴史や現代の問題点など。

手抜きになるけれど、この記事を再掲。お赦しを!

チョコレートの原料、カカオ豆

 

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チョコの話の詳細は、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)にも。

 

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世界中で自国主義、自国ファーストが横行している現代、バレンタインデーに、チョコの原材料となる主要なカカオ豆生産地であるガーナなど途上国での児童労働や地球温暖化による旱魃影響などにも意識を向けるのも良いのでは? いや、ぜひそうしましょう!!

 

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巨樹アンケート 巨樹カレンダー進呈!

全国巨樹・巨木林の会では、「巨樹(巨木・大木など)」に対する意識などを明らかにし、今後の巨樹の保全・活用などに役立てるためにWebアンケートを実施しています。

ご回答いただいた方には「2026年巨樹カレンダー」を進呈いたします。
数量に限りがあります。なくなり次第終了します。お早めにどうぞ!

巨樹カレンダー2026
各月に会員撮影の巨樹写真

皆さまのアンケートへのご参加とともに、お知り合いなどへの呼びかけ(転送・拡散)もしていただければ幸いです。
ご協力をお願いいたします。

 

アンケートURL  

https://forms.gle/ajXUiezkmMczna4u9

forms.gle

アンケートQRコード

巨樹アンケートQRコード

 

全国巨樹・巨木林の会 ホームページ 

https://www.kyojyu.com

 

関連ブログ記事(みどりの旅路)

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帝国の支配再び!? 米国のベネズエラ侵攻を生物多様性の視点から

今年も新年早々から驚愕のニュースで始まった。そう、米国によるベネズエラ侵攻とマドゥロ大統領の拘束・移送(というか、拉致)だ(2026年1月3日)。

なんでも、麻薬密輸などの容疑で米国の法廷にかけるためという。確かに身柄拘束・移送時にマドゥロ大統領の両脇にいたのは麻薬取締りの政府機関職員だった。しかし、ベネズエラに実際に侵攻したのは紛れもなく米軍だったし、攻撃によってカラカス市民も含め100名以上が死亡したとも伝えられている。

麻薬密輸容疑は軍事侵攻のための単なる口実で、真の狙いは世界一の埋蔵量を誇る石油利権の確保であることは誰も疑う余地のないところだ。現に、トランプ大統領は、ベネズエラを「米国が運営する」とまで言っている。(2025年ノーベル平和賞受賞者マチャド氏など、今回の米国の侵攻をマドゥロ大統領による独裁・圧政からの解放と喜んでいる多くの人々がいるのも確かだけど)

全く瓜二つの出来事が、37年前の1989年に起きている。時のブッシュ(父)大統領がパナマを2万5千人以上の米軍で攻撃し、最高実力者ノエリガ将軍の身柄を麻薬密輸などの罪で拘束した。この時にも、無差別爆撃により、市民数百〜一千人が犠牲になった。

このパナマ侵攻の真の狙いは、パナマ運河の支配だった。トランプ大統領も、パナマ運河を奪還すると繰り返し主張している。
今回のトランプ大統領によるベネズエラ侵攻と石油利権確保の動きは、驚くほど37年前のパナマ侵攻と似ている。

しかし、大国による利権のための他国侵略は、今に始まったものではなく、昔から繰り返されてきたものだ。
それが長期に渡り世界中で行われていたのが、いわゆる「帝国主義」の時代だ。
欧州の覇権国により世界は分割統治、植民地化され、資源が一方的に覇権国に送られ、あるいは貿易により取引された。そこには、人も「奴隷」という名で含まれていたのだ。

拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)では、「生物多様性」の視点から、コロンブスの米大陸到達から始まる大航海時代帝国主義時代に、さまざまな生物資源やそれを産出するラテンアメリカ、アフリカやアジアの国々が覇権国(宗主国)に支配・独占されてきた多くの事例を示した。

コロンブス像(バルセロナにて)

スペインの植民地となったインカ帝国の首都クスコのキリスト教会、
その基礎は頑丈で取り壊しもできなかったインカ時代の石積み(クスコにて)

 

オランダ東インド会社建物、壁にはVOCのロゴが(ジャカルタにて)

それは現代でも、グローバル企業によるバイオテクノロジーを背景とした資源独占と利益確保優先など、帝国主義とは形を変えつつも同じ構造で存続してきている。

これに対し、生物資源の原産国でもある発展途上国(グローバルサウス)が反撃したのが、「生物多様性条約」(1992年成立)交渉の場だった。
原産国の生物資源を利用して食料や医薬品などを製造して利益を得ている先進国・グローバル企業は、利益を原産国である途上国に還元すべきとの主張などだ。

生物多様性条約COP1会場(ナッソーにて)

生物多様性条約COP10会場(名古屋にて)

 

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こうした生物多様性条約制定交渉の場などでの途上国の反撃と攻防を、拙著では「航海時代以降欧米などを中心とした世界の国々は争ってきた。現在でも、国境を越えたグローバル企業も巻き込んで争っている。もちろん、大航海時代やその後の植民地、帝国主義の時代のように、武力を使用するわけではない。争いの場所は、「生物多様性条約」の制定など国際的な環境政策を協議する場である。」(第1章 現代に連なる略奪・独占と抵抗 p.77)と記述した。

そう。「武力を使用するわけではない」と原稿を書いていたのは、2019年〜2020年。民族間の紛争は世界各地で勃発・継続していたが、大国による資源獲得のための侵略が再現されるとは夢にも思っていなかった。

それにもかかわらず、出版(2021年1月)の翌年2月には、ロシアによるウクライナ侵攻が行われ、今また武力行使を伴う資源強奪が現代社会で行われてしまったのだ。
自国の利益のため、武力で他国を攻撃し、支配するという覇権主義が、現代社会ではまかりとおりつつあるのを危惧するのは私だけではない。

もっとも、米国による他国攻撃は今回のベネズエラ侵攻に始まったことではない。前述の37年前のパナマ侵攻しかり、いやブッシュ(子)大統領による2001年同時多発テロ後のイラク侵攻とフセイン大統領拘束も、背景には石油利権もあるようだ。さらに古くはベトナム戦争など、枚挙にいとまがない。

経済利権で動く米国は、生物多様性条約においても、生物資源(遺伝資源も含む)利用への規制や特許侵害などを懸念するグローバル企業の要請などを受けて、条約成立時から現在まで、条約を批准していない。

それどころか、トランプ大統領は、すでに批准・加盟している「国連気候変動枠組み条約」(1992年成立)からの脱退も表明した(26年1月7日)。第1次政権時にも「パリ協定」からの脱退を宣言したが、実施はされなかった。今回は、条約そのものからの脱退宣言だ。

それにしても、ウクライナに武力で侵攻し領土を奪おうとしているロシアや、かつてチベットを武力併合し、今また力で東シナ海などを実効支配しようとしている中国が、国連安保理事会緊急会合(1月5日)で米国の軍事作戦は国際法違反だと非難したというが、全く呆れてしまう。

これって、「目糞、鼻糞を笑う」というか「同じ穴のムジナ」というか、もっと言えば「盗人猛々しい」というか、だと思うけどネ。

そして、トランプ大統領が公言しているドンロー主義による「西半球支配」は、大航海時代にスペインとポルトガルが「トルデシリャス条約」(1494年締結)と「サラゴサ条約」(1529年締結)による二本の線で世界を分割したのを彷彿とさせる。

米国の西半球支配に対して東半球を支配するのは、果たして欧州か、ロシアか、あるいは中国か。こんなことを大国間で裏取引されてはたまったものではない。

 

遺伝資源の利用と利益配分(ABS課題)に対応した「名古屋議定書」などを含め、生物多様性条約制定をめぐる攻防などの詳細は、拙著をご覧いただければ幸いである。

 

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午年につき馬の姿をお年賀代わりに

新年あけましておめでとうございます
 昨年はブログをお休みしていましたが、新年なのでとりあえずご挨拶をアップ

 本年もよろしくお願いします

 今年は午年

 これまでたくさんの馬を見てきた。野生の馬、働く馬・・・
 写真もいろいろあるはずだが、探してデジタル化するのも大変・・
 とりあえず、手元にある最近のデジタル写真で・・・

 

 都井岬(宮崎県)でも日本の野生馬を見たことがあるけれど、野生馬といえば、アフリカのシマウマ

シマウマ(上:ケニア・ナイロビ国立公園、下:南アフリカ・クルーガー国立公園)

 

 研究調査で通っていたインドネシアでは、牛車とともに馬車もまだ現役

人や荷物を運ぶ馬車(インドネシアにて)


 東京の四谷で生まれ育った私は、子どもの頃小学校の通学路でよく騎馬警官を見かけた。今では皇居周辺に行ってもめったにお目にかかれない。

 

 モロッコの古都ラバトの世界遺産ムハンマド5世霊廟では、騎馬衛兵が微動だにせずに

ロッコ・ラバトの騎馬衛兵

 働く馬でも、戦争に駆り出された馬には過酷な運命が待っている。かわいそうに・・・

騎兵姿のデモンストレーション(アイルランドにて)


 昔から、英雄は騎馬姿を好む?

チンギスハーン騎馬像(モンゴル・ウランバートルにて)
現在では巨大な像が作られているが、それ以前の小さな像

 騎馬軍団が活躍したモンゴルでは、今でも乗馬が盛ん

モンゴルにて

 

 現代では、世界各地の観光地で馬が観光客を運んでいる

ロッコマラケシュの市場にて

インドネシア・ブロモ山にて

 これまでso-netブログ(ssブログ)で新年には毎年、干支の野生動物写真などをアップしてきたが、昨年ブログを休んでいたらいつの間にかssブログが譲渡、閉鎖されてしまっていた(移行期間はあったらしいけど知らなかった)。

 

 手元に残してあった12年前の午年のブログ記事原稿と写真を元に、若干の修正・追加をしてこの度アップしました。

COP16と米国大統領選を考える(1)

生物多様性条約COP16が2024年11月2日夜に閉幕した。

そもそも、生物多様性条約、あるいはCOPとは何なのか。
今回のCOP16の成果(決議内容など)は何だったのか。
そして、米国あるいは大統領選との関係は?

 

生物多様性条約とは

生物多様性条約は1992年に作成され、同年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(リオ・サミット)で署名開放され、1993年に発効した。

この条約の目的は、①生物多様性保全、②生物資源の持続可能な利用、③利用から生じる利益の衡平な配分、の3点だ(なお、条約条文では、3項目が箇条書きされているわけではない)。

生物の絶滅を回避するための「生物多様性保全」(目的1)、あるいは生物資源の利用に際して乱獲など過度な消費を避ける「持続可能な利用」(目的2)、くらいまでならこの条約の目指すところ(目的)は理解していただけると思う。

問題は、目的3に掲げられている「利用から生じる利益の公平な配分」だろう。
条約作成過程では、大航海時代以降の西欧の植民地主義帝国主義による生物資源搾取の歴史から、途上国によって先進国に対して、資源原産国としての認知と尊重、資源利用への対価、技術移転と資金援助などの様々な主張がなされた。

これに対し、農産物改良や新薬発見のために新たな生物資源を探査・利用したい多国籍企業などの意向も受けた先進国は、無制限の技術移転やその際の知的財産権侵害などに懸念を示し、知的財産権の確保などを主張した。いわゆる南北対立だ。

こうした対立の中で成立した条約は、途上国の主張を取り入れた妥協の条文となり、定義や実施方法などの不明確な部分が山積されたままだった。

COP(締約国会議)とは

これらのいわば宿題部分や条約目的遂行のための実施具体策などを参加国が検討するのが、「締約国会議」で、英語の頭文字をとってCOP(コップ)と称されている。

つまり各条約にCOPがあるわけで、ニュースなどで有名なところでは、生物多様性条約と同時期に成立した「国連気候変動枠組み条約」、いわゆる地球温暖化防止の条約のCOPだろう。

このCOPで結ばれた新たな国際的合意が議定書や協定で、その義務的拘束力の強さなどにより呼び方が異なっている。地球温暖化では、京都議定書やパリ協定が有名だ。

生物多様性条約のCOPは、条約発効(1993年12月)翌年の1994年11月に第1回(COP1)が、バハマのナッソーで開催された。この会議には私も参加した。
このCOP1では、南北対立事項の対処方針をめぐって、G77などの途上国グループと先進国グループの非公式会議がそれぞれ別々に連日夜更けまで開かれたが、重要課題はもちろん事務的な事項さえも満足に決定できないまま終了した。

COP1の会議場(ナッソー)

COP16の参加者は過去最大の2万人以上だったというが、COP1は小規模な会議だった。

その後、おおむね2年ごとにCOPが開催され、条約成立時からの懸案事項であるバイオテクノロジーの安全性に関連して、遺伝子組換え生物の使用規制などを規定した「カルタヘナ議定書」などが採択されてきた。

2010年に名古屋で開催されたCOP10では、条約成立(1992年)以来の懸案だった前述の条約目的3に関連する遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)のルールが、課題は残しつつも「名古屋議定書」として採択された。
ほかにも、生物多様性保全のためのゴールとターゲットが定められた「愛知目標」なども採択された。

COP10が開催された名古屋国際会議場

COP10会議場

直近のCOP15でも、愛知目標の後継となる「昆明モントリオール目標」が採択され、2030年までに陸域、海域の30%を保護区などとして保全する「30by30」などが盛り込まれた。
ちなみに、目標の名称は、本来COP15は21年に昆明(中国)で開催される予定だったが、新型コロナのために開催が再三延期され、リモート会議だけでは終了しなかったために、22年にモントリオール(カナダ)で最終合意されたことから、両開催地の名称を冠したことによる。

COP16の成果は

今回のカリ(コロンビア)で開催されたCOP16では、多くの議題で交渉が難航して会議日程を1日延期したものの、昆明モントリオール目標の達成度評価や資金に関わる重要議題などの合意は持ち越され、本会議自体が中断となった。

なぜ「閉会」ではなく、「中断」なのか。
要は、会議日程が延長されたために、最終日の会議では多くの参加国の代表団が帰国してしまい、会議成立の定足数を満たすことができなくなってしまったのだ。

このため、正式に「閉会」ではなく、後日改めて再会会合が開催される「中断」となった次第。

私が国際会議に出席していた頃も、当時の省庁では海外出張旅費が不足していて、航空券もディスカウントで、搭乗便変更や払い戻しができないものだった。現在でも、多くの途上国などではそんな理由で、当初予定の日程で帰国せざるを得なかったのだろうか。

名古屋COP10の時も、名古屋議定書など最終議案の採択は時計の針が12時を回って正確には翌日にはなったが、帰国便には間に合ったので大事には至らなかった。関係者はさぞかし安堵したことだろう。

 

多くの持ち越し議題の中で、合意に至った主要な議題の一つとして、「遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)」の利益配分の多数国間メカニズムがある。

これは、生物のDNAから得られた遺伝子データ(DSI)から新たに医薬品や健康食品などを製品化した場合に、製薬会社・食料品会社などDSIを使用して利益を得る大企業などに対して、利益や売上などの一部をグローバル基金(カリ基金)に拠出するよう求めるものである。拠出率や対象企業規模の目安は、次回COP17 (アルメニアの予定)までの期間に更に検討されることになっている。

このメカニズムの考え方の元となっているのは、前述3番目の条約目的であり、名古屋議定書として合意された遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)の考え方だ。

大航海時代以降、トマトやジャガイモをはじめとする多くの農作物や熱帯地域の生物から抽出した医薬品などが植民地から宗主国へ、さらには世界に広まった。
しかし、これに携わった東インド会社や現代のグローバル企業などは莫大な利益を得たにもかかわらず、原産地の先住民や地域住民はその恩恵を受けていないという、途上国側の根強い不満がある。

この是正を求めたのが、前述の生物多様性条約成立交渉時の対立(南北対立)であり、条約成立から20年近くの時を経てやっと合意した「名古屋議定書」だった。

今回のDSIの利益配分に関するメカニズムは、現在の産業界では欠くことのできない遺伝資源情報の利用にも適用しようとするものだ。

生物多様性と産業経済、そして米大統領

地球温暖化対策のCOPは、合意された数値目標も明確で、気温上昇など身近な現象もあり、関心が高い。温室効果ガス(二酸化炭素など)排出削減のための自動車や発電、リサイクルなど、生活だけではなく産業にも直結するもので、産業界の関心も高い。

これに対して、生物多様性条約COPは、どうしても関心が低くなりがちだが、産業経済への影響はもちろん、私たちの生活・生命への影響も決して軽くはない。いや、むしろボディーブローのように効いてきて、気がついた時には手遅れになっているのではないか。

しかし、生物多様性条約の、特に遺伝資源の利用と利益の配分については、経済・産業分野への大きな影響も懸念されることから、グローバル企業を擁する米国は、生物多様性条約そのものに当初から加盟(批准)していない。

今回の大統領選の結果、トランプ大統領が就任すれば尚更、米国産業擁護のために条約の批准や実施協力から離脱する傾向は強まるに違いない。

 

次回のブログ記事では、条約で遺伝資源の利用と利益配分が取り上げられた背景、途上国(グローバルサウス)と先進国の対立(南北対立)、米国大統領選の結果が生物多様性条約に及ぼす影響などについてみていきたい。

大航海時代から現代のバイテク時代までの先進国・グローバル企業の収奪や条約の概要、成立交渉時の攻防、COP10などについて、もう少し詳しく知りたい方は、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書、2021年刊)をご覧ください。

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