みどりの旅路

実務と研究から自然と文化をたどる共生論・多様性論

『生物多様性を問いなおす』書評と入試問題採用 (更新)

ブログを書いていると、正直なところ読者の反応が気になる。

私はこのブログ以外のいわゆるSNSはやっていないが、読者の皆さんの中には多くのSNSを駆使している方も多いことだろう。そして、バズることを期待している方も多いことだろう。

私も、このブログのスタート「ブログ再開の辞」で書いたように、ブログができるだけ多くの皆さんにご覧いただけることを期待しているのも事実だ。

そして、「生物多様性」ということが一人でも多くの方の目に留まり、関心を持っていただき、理解されることを・・・

誰でも、自分の仕事や振る舞いを評価してほしいし、他人の目も気になるものだ。

私も然り・・・・

 

目次

 

そこで、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)の評判(書評)をググってみた。

生物多様性を問いなおす』書評

出版(2021年1月)からしばらくして、出版社編集者から書評の掲載されている新聞や雑誌のコピーが届いた。

その中に、毎日新聞社が発行するビジネス誌週刊エコノミスト(2021年3月12日号)「話題の本」欄の書評もあった。

「・・・多様な生物の存続が不可欠と著者は論ずる。先進国が途上国の生物資源を収奪してきた歴史も詳述している。・・・ディテールがよく調べられていて面白い。」との評でホッと胸を撫で下ろした。

weekly-economist.mainichi.jp

書籍の評判といえば、ご存知アマゾンには五つ星の評価とレビューがある。

また、読書の記録・管理のweb 読書メーター(bookmeter)でも11人(2023/02/19現在)の方が感想・レビューを投稿してくださっている。

bookmeter.com

これまた、いずれもご好評をいただき安堵しているところ。

 

調べてみると他にも、「はてなブログ」を含めて何人かの方が拙著を紹介・書評してくださっていた。

全てを調べ尽くしたわけではないが、感謝を込めて書評記事をいくつか紹介させていただく。

 

Yuma Yasueさん

「わかりやすいだけでなくて、政治的な利害や宗教観念が見え隠れする議論の場で「地球のため」という大義を通すことの苦労や葛藤に触れている文体が良かった。」

note.com

fukusuke55さんの「本と散歩と・・・」

「私の頭の中にぐるぐる巡っていたパラドクスが本書で整理されました。「解決」とは違う感覚。「気づくことができてよかった」と心から思いました。・・・「日々を大事に生きよう」と、なぜか哲学的な思いに溢れた読書体験でした。」

fukusuke55.livedoor.blog

内野知樹さんの「内野日誌」

「強国が世界中に進出し、略奪し、支配し、それによる現在まで続く対立、国立公園における先住民への非人道的扱いからの復権、ゆたから自然を壊さない共存、人類はどのように自然と関わってきたのか、何をしてしまったのか、共生は可能なのか、などこれまでの歴史とこれからのことを学ぶことができる。」

tomokiuchino.blogspot.com

wsfpq577さん

「やや日本史を「自然との共生」に引きつけすぎにもみえるが、エコツーリズム・国際平和公園・持続可能な開発援助などさまざまな論点が紹介され、コスパは高い。」

wsfpq577.hatenablog.com

nakaさん
「この本のタイトルを見た瞬間手に取り、購入しました。・・・・人間と自然の共生【相利共生】がSDGs達成に向けて大切であり、生物多様性を問い直すべきだと。」

note.com

しのジャッキー(篠崎裕介)さん

「これまで自分で調べていたTNFDとかの文脈だと、以下みたいに、グローバルのリスクだよね、という側面からの知識が主でした。一方で、本書から得られた視点は、「高い生物多様性資本を持つ国(なかでも特に発展途上国)」vs「生物多様性の資本を多く持たない国(特に先進国)やグローバル企業」という構図でした。」

note.com

「人類もその一員である生物圏全体の進化の可能性を内包した生物基盤の保全無くして人類存続はありえない。これらを統合した第3のアプローチが求められるとして、この全体像を以下のようにまとめられていて、全体が俯瞰でき助かりました。」

note.com

「知」ニュークリエイトさん (2023/9/21追記)

「この本のタイトルを見た瞬間に現代の多様性問題が脳裏にフラッシュバックされ、手に取り早く読みたいと購入しました。

現在、生物多様性という言葉を良く耳にします。生物多様性を守ることによって、地球の資源や人類のバランスが保たれていると感じています。」

ryblog12.com

 

(上記の引用は、各ブログ書評からの一部)

 皆様、ありがとうございます!!

 

他にもたくさんの方からブログでご紹介いただいているかと思います。

見落としもあるかと思いますので、ご紹介いただければ幸いです。

多くの方々により好意的な評価をいただくのは、著者としても大変励みになります。

 

入試問題にも採用!

書評だけではなく、大学や公立の図書館の環境関係図書リストにも掲載されていた。

 

さらに、「ゆめほたる環境読書感想文コンクール2022」の中学生の部の推奨図書にもなっていた。

 

それだけではない!

 

日本体育大学ほかの大学や茨城県立高校など高校、そして中学までもの2022年入学試験の国語の問題文にも採用・出題されていた。

もちろん入試問題作成のたびに著者に連絡があるわけではない(事前に連絡したら、入試問題がバレてしまうからね)。入試問題として無許可利用するのは、著作権法上の例外規定のようだ。

 

しかし、学習教材関連出版社が「入試過去問問題集」を出版する際には、著者の掲載許可が必要となるので、著者の知るところとなるというわけだ。

 

入試問題に採用!

それも、著書内容に関連した生物科や社会科の科目ではなく、国語科の問題というのが驚きだった。

 

文章を生業とする小説家以外にも、物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦のエッセイなどは、国語の教科書や問題文として採用されていることで有名だ。

 

拙著がそれらの偉人たちと同レベルとは思えないが、実際に出題された入試問題文を手に取って見ると、なんとなく頬が緩む気がするのも事実だ。

 

2023年度も、城西国際大学日本赤十字看護大学などの入試問題に採用された(2023/9/21追記)。

 

(以下、2023/3/1追記)

書籍の概要

生物多様性を問いなおす』(ちくま新書

著者: 高橋 進
発行所:筑摩書房 (2021年1月刊) ちくま新書(1542) 286ページ  
価格:880円(税込968円)

概要:

大国による生物資源の収奪・独占と原産国の抵抗、人間の勝手な線引きによる害虫・害獣駆除と生態系の攪乱など、大航海時代からバイオテクノロジー時代までの豊富な事例を基に、地域社会や世界、生きものとの共生と将来世代への継承を目指す「三つの共生」を提唱。覇権主義、ポストコロナやSDGsを見据えて、地球公共財の収奪・独占という利益第一主義を脱し、相利共生を実現する構図を示す(2023/9/21更新)。

【目次(構成)】

プロローグ 混乱の中での問いかけ

第一章 現代に連なる略奪・独占と抵抗
1 植民地と生物資源
西洋料理とコロンブスの「発見」/ヨーロッパの覇権/チョウジと東インド会社/プラントハンターと植物園/日本にも来たプラントハンター/日本人が園長―ボゴール植物園物語/ゴムの都の凋落
2 熱帯林を蝕む現代生活
そのエビはどこから?/東南アジアのコーヒー栽培/インスタントコーヒーとルアックコーヒー/ほろ苦いチョコレート/日本に流入するパームオイル/地球温暖化生物多様性/熱帯林の消失
3 先進国・グローバル企業と途上国の対立
先住民の知恵とバイオテクノロジー/グローバル企業と生物帝国主義/搾取か利益還元か/農業革命と緑の革命/品種改良と遺伝子組換え/バイオテクノロジー企業の一極支配/途上国と先進国の攻防/生物多様性条約/遺伝子組換え生物の安全性をめぐって/名古屋議定書=生物の遺伝資源利用の国際的ルール/ポスト愛知目標からSDGsへ

第二章 地域社会における軋轢と協調
1 先住民の追放と復権
放逐された人々/保護地域の発生/国立公園の誕生と拡散/地域社会との軋轢と協調/先住民への土地返還/排除から協働へ/日本の国立公園は?
2 地域社会と観光
植民地とサファリ観光/エコツーリズムの誕生/エコツーリズムと地域振興
3 植民地の残影から脱却するために
インドネシアの国立公園/地域社会と協働管理の胎動/多様な管理実態/エコツーリズムと地域住民

第三章 便益と倫理を問いなおす
1 生きものとの生活と信仰
オオカミ信仰/駆逐か共生か/米国の捕鯨と小笠原/捕鯨をめぐる文化と倫理/もののけ姫―森の生きものと人間
2 生物絶滅と人間
アイルランドのジャガイモ飢饉/第六の大量絶滅/眠れぬ夜にカの根絶を考える/生物多様性の誕生/キーワードは変遷する/生物多様性が必要な理由(わけ)/絶滅生物は、炭鉱カナリアでありリベット一つである

第四章 未来との共生は可能か
1 過去から次世代への継承
自然の聖地/世界遺産富士山/植物名と山岳信仰/現代に蘇る聖なる山/国境を越えた国際平和公園/悠久の時を生きる巨樹/巨樹―未来への継承
2 持続可能な開発援助とSDGs
地域住民と連携した熱帯林研究/持続可能な国際開発援助/コスタリカの挑戦/SDGsの系譜/「環境の炎」が「開発の波」に打ち消される/生物多様性とSDGs

終 章 ボーダーを超えた三つの「共生」
世界・自然・未来との共生を目指して/生物多様性保全の二つのアプローチ/第三のアプローチ/「全地球的」問題か、「一地域の」問題か/「資源ナショナリズム」か、「地球公共財」か/生きとし生けるものへの眼差しの変化/人間は自然の「支配者」ではなく、「一員」である/三つの共生

エピローグ 幸せの国から

参考文献

 

わたしがブログを書く理由 生物多様性と私的共生論

ブログ記事掲載(更新)の少ない私にとって、「わたしがブログを書く理由」のお題を見つけて嬉しくなり、早速書き出しました。このお題は、既に書いたことがあり、また皆さんにも知ってもらいたいからです。

 

はてなブログ」を開始して最初の記事が、中断していた前のブログを再開した理由です。まさにこれが「わたしがブログを書く理由」です。

 

意気込んで再開して、しばらくは更新も続きましたけど、その後すぐに忙しさにかまけて更新頻度が落ちました。

 

bio-journey.hatenablog.com

 

書きたいことは沢山あるのですが、どうしても身構えてしまいます。もっと気楽にとは思いますが・・・

これでは、「わたしがブログを書く理由」を実践できませんね。

 

何はともあれ、私がブログを書く理由。前置きが長くなりました。過去記事として貼り付けても良いのですけど、あえてコピペします。

これでも十分手抜きですけど、更新が無いよりは良いかと・・・

 

生物多様性って何? ブログ再開の辞

15年間の「生物多様性」ブログ

私は15年前からブログで、生物多様性世界遺産・国立公園、巨樹・巨木などについて発信してきた(「人と自然」so-netブログ、現ssブログ)。

ブログ開設の目的の一つが、生物多様性について、多くの人に理解してもらいたいとの思いからだった。

2010年に名古屋で「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が開催された折には、駅などに置いてあるフリーペーパー「R25」(リクルート社発行)の11月18日号の「ところでCOP10って結局、みんなど何を話してたの?」という記事へのインタビューがあった。

担当ライターの方がインターネットで検索して、私のブログが生物多様性について一番わかりやすかったとのことでお声がかかったとか。
誠に光栄であると同時に、ブログの意義・成果があったと安堵した次第。

 

その後、大学を退職したのを契機に、2020年3月でブログを閉鎖した。

 

それがまたなんで再開?

2020年10月には中国の昆明で、COP10で採択された自然共生などの世界目標「愛知目標」を更新して、ポスト2010年目標を採択する予定のCOP15が開催されるはずだった。
しかし、新型コロナ・パンデミックに対する中国のゼロコロナ政策のため、何度も開催延期となり、ついには2022年12月にカナダのモントリオールで開催された。
モントリオールは条約事務局の所在地だが、議長国はあくまで中国という変則的なCOP会議だった。
ここで採択されたポスト2010年目標が、「昆明モントリオール生物多様性枠組」だ。

 

この2030年までの世界目標は、新聞などマスコミで取り上げられたことは取り上げられたが、「持続可能な開発目標SDGs」や「地球温暖化=気候変動」などに比べると知名度は圧倒的に低い!
そもそも「生物多様性」自体の知名度が低いのが実情だ。またまたヒガミだけど・・・

若者たちも生物多様性保全のための行動を起こしている(COND:https://condx.jp/)ので応援もしたい。

はてなブログを含めて、多くのブログやWebでも「生物多様性」を取り上げているけれど、私も再挑戦したい。

こんなことから、ブログを再開することにした

生物多様性と言っても硬い話だけではなく、できるだけわかりやすく解説していきたい。
生物学というよりは(もちろん生物学の話もあるが)、むしろ歴史や民俗学、国際関係、時には倫理などに関連することの方が多いかもしれない。私たちの日常生活との関連も。

生物多様性だけではなく、国立公園や世界自然遺産などの保護地域、それにまつわる旅や地域の人々の文化と生活なども・・・

当面は、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書2021年刊 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073655/)の限られたページ数では書ききれなかった話題や掲載できなかった写真、そして最新の情報などが主となるかなぁ。

生物多様性を問いなおす』(ちくま新書


表題の「生物多様性って何?」については、時間をかけてブログ更新するので、その中で答えを見つけていただければ幸いだ。

 

むしろ「共生」への関心が

以上が再開最初の記事での「わたしがブログを書く理由」というわけですが、今では「生物多様性」の発信というよりは、むしろ拙著後半で述べて副題にもなっている、生きもの、地域社会など「世界・自然・未来との共生」に力点を置きたいと思っている次第です。「私的共生論」もよろしくお願いします。

 

bio-journey.hatenablog.com

 

白馬岳で白山の高山植物を鑑賞 植物名に付された山岳名

白馬岳で高山植物撮影

北アルプスの白馬岳(2932.3m)に登山した。腰痛起因の大腿部痛をおしての登山のため、大雪渓ルートは避けて、比較的容易な栂池から白馬大池のルートをとった。

白馬岳稜線

さすが天然記念物に指定されるほど高山植物で有名なだけあって、数えきれないくらいの花々。

 

お花畑の一部

花だけではなく、ライチョウの親子も。

ライチョウの親子(ちょっと見難い?それが保護色?)

頻繁に写真を撮るので、行程はゆっくりだ。

若かりし頃の植物写真撮影は、フィルム代や現像代を気にして、構図や被写界深度など慎重に見極めるため、撮影枚数は少なかった。

しかし今では、デジタルでフィルム代もかからないし、最近ではデジカメも持たずにスマホだけ。あとで構図の修正もできる。シャッターを切る数は圧倒的に多い。

それでも、ついつい昔の癖で、構図などを気にしてしまうことも多いし、撮影枚数も若い人に比べれば少ないのでは。

 

今回はこうしてフィルム代を気にせずに撮影した多くの高山植物の写真から、そのごく一部の「ハクサン」の名を冠した高山植物をご紹介。

その前に、ちょっとご説明・・・・

植物名の分類

かつて私は、約8000種の日本産高等植物(『植物目録』環境庁1987年)名の接頭辞部分を解析・分類したことがある。

その結果は、動植物名、地名、色彩、物品、大小などの形容詞、数字、生育場所など701の接頭辞に分類できた。

その分類の中では、地名に関する接頭辞(227分類、該当する接頭辞が冠された植物1805種)が圧倒的に多く、マツやキクなど植物に関する116分類1165種、オオ(大)やコ(小)、ホソ(細)など形容詞の111分類1912種、イヌやチャボなど動物が59分類337種などと続く。

動物名を冠した高山植物の代表のひとつがコマクサ。花の形状が馬(駒)に似ているからという。今回の白馬岳にも多数が生育。

コマクサ(花の形状が駒)

該当種数の多いものは、なんといってもオオ(大)の262種だ(このうち、オオバ(大葉)が付くのが76種)。オオの次には、ヒメ(姫)の256種、エゾ(蝦夷)200種、ミヤマ(深山)165種といった具合だ。

地名に関するものでは上述のとおり、エゾ(蝦夷、該当植物200種)が圧倒的に多く、ツクシ(筑紫、68種)、リュウキュウ(琉球、67種)、ヤク(シマ)(屋久島、66種)など。

白馬岳にも生育するウルップソウは地名の付された植物名で、その由来は千島列島のウルップ島で最初に発見されたからという。

千島列島ウルップ島で発見されたウルップソウ

植物名に付く山岳名

山地・山岳名に関する接頭辞は65分類(392種)で、植物種数の多いものをあげると、イブキ(伊吹山、22種)、フジ(富士山、19種、ただし、植物の藤を由来とするものは除く)、ハクサン(白山、18種)、ハコネ(箱根山、16種)、ニッコウ(日光山、15種)などとなる。

山地・山岳名を冠した植物は、必ずしもその山固有(そこだけに生育)というわけではないが、ウルップソウのように最初に発見された場所として付される場合も多い。

 

ちなみに、種数1位の伊吹山は、滋賀県岐阜県にまたがる標高1377mの日本百名山の山地だ。石灰岩地帯特有の植物も多く、牧野富太郎など多くの植物学者により調査されてきたこともあり、イブキを冠する植物名が多い。

その代表のひとつがイブキトラノオ。白馬岳にも多く生育していた。

これは、動物名のトラ(虎)を冠した植物でもある。トラノオ=虎の尾(2023/08/20追記)

伊吹山の名を冠したイブキトラノオ

白山の名を冠した高山植物

白山は、富士山、立山とともに日本三大霊山といわれている。信仰だけでなく高山植物の宝庫でもあり「花の白山」としても有名だ。

先の分類でも、伊吹山、富士山に次いで第3位の18種の植物名にその名が冠されている。

 

(以上の植物名の分類と山岳については、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生』(ちくま新書)にも記載されているのでご参照を)

 

bio-journey.hatenablog.com

 

ということで、やっと本記事の本題「白馬岳で白山の高山植物を鑑賞」する。お待たせしました。

とはいうものの、今回の登山で写真撮影できたものはわずか3種だけ
写真を見直していたら、もう1種発見して追加したので4種。(2023/08/20)

羊頭狗肉、期待外れはご容赦を!

 

ハクサンフウロ

ハクサンシャクナゲ
ハクサンコザクラ

ハクサンイチゲ(2023/08/20追加)

おまけで、今回の白馬岳ではないけれどハクサンチドリ

ハクサンチドリ

他ブログでの類似過去記事

「植物名の由来・分類」:人と自然:SSブログ (ss-blog.jp)

これって何の法則? ご無沙汰の向こう側

しばらくの間、用務が立て込んでブログ更新はおろか訪問もできなかった。

更新頻度は普段から低いから、用務の所為にはできないのだけれども。

 

それにしても、予定や仕事は、重なる時には重なるものだ。

年中忙しい方々には申し訳ないけど、退職後は悠々自適、晴耕雨読の生活ができると楽しみにしていた。

 

けれど、現役の頃に比べれば格段に暇なものの、頼まれ仕事や各種行事類が結構ある。

これが均等に分散すれば暇を持て余すこともなく、ちょうど良いのだけど、そうは問屋が卸さない。

あるときはある、ないときはない!

 

なぜか仕事が重なることは、現役時代からあったし、誰でも経験することだろう。

きっと、ビジネスや生活の中で、「◯◯の法則」とでも呼ばれているに違いない。

かつて一世を風靡した「マーフィーの法則」を思い出した。この中に、このような事例も法則として位置づけられているかどうかは知らないけれど。

 

・・・と、ブログ訪問や更新できなかったのを何かの法則のせいにしたけど、単なる言い訳に過ぎない。

 

かえって忙しい時ほど、次々と用務をこなしていった時期もあった。

あの頃君は若かった🎵

 

訪問できなかった記事も、少しずつ読ませていただきます。

 

ボゴール宮殿と植物園 天皇皇后両陛下のインドネシア訪問

インドネシア訪問中の天皇皇后両陛下は、2023年6月19日、ボゴール宮殿での歓迎行事の後、ジョコ大統領自ら運転するカートで隣接する植物園を巡られた、と報じられた。

 

ボゴール宮殿は、ジャカルタから60kmほど南のボゴール市にある大統領離宮だ。

オランダ植民地(オランダ領東インド)時代の18世紀から19世紀にかけて建設改修が行われた植民地総督の別荘だった。

ボゴール宮殿

オランダに代わって一時的に大英帝国の植民地となった1811~1816年の間は、シンガポール建設で有名なトマス・スタンフォードラッフルズ総督も、バタヴィア(現、ジャカルタ)の猛暑から逃れて冷涼な宮殿によく滞在した。

彼は、宮殿に連なる土地を本国のキューガーデン(王立キュー植物園)から呼び寄せた庭師によってイギリス式庭園として整備したほどだ。

この庭園を妻のオリビア・マリアンヌ夫人と散策するのが何よりもの楽しみだったようだ。

しかし最愛の妻オリビアは、病により1814年に亡くなり、ラッフルズは傷心の中、妻がこよなく愛した庭園に白亜の記念碑を建てた。この記念碑は、現在でも植物園の入口近くに残っている。

リビア夫人の記念碑

ラッフルズ夫妻が整備し散策したボゴール宮殿に連なる47ヘクタールの庭園は、再びオランダ領となった1817年に、ドイツ人カスパー・ゲオルグ・カール・ラインヴァルトによってボゴール植物園として再整備された。

オランダ領なのにドイツ人? 彼はアムステルダムで植物学を含む自然科学を学んだとかで、江戸時代に来日したドイツ人シーボルトもオランダ商館の一員だったから、この時代にはよくある話だったかも。

 

植物園には、世界各地のオランダの植民地から作物や薬草など様々な植物が集められた。

プラントハンターが活躍した大航海時代には、植物園とは植民地からの珍しい医薬品や換金作物を本国オランダに送るための実験農場、気候馴化の中継地でもあったのだ。

1848年には西アフリカから4粒のアブラヤシ(オイルパーム)の種子がボゴール植物園にもたらされ、現在の東南アジアでのアブラヤシ・プランテーション造成の契機となった。

植物園の4本のアブラヤシのうち最後の1本も、1993年には枯れてしまった。

 

第二次世界大戦(太平洋戦争)中の1942年以降はインドネシアが日本の支配下となり、植物園長も日本人植物学者の中井猛之進が務めた。

名称も日本語のShokubutsuenと変わった。

この間には、軍部による木材調達のための樹木伐採要求もあったが、中井園長らはこれに抵抗し、植物園の樹木は守られた。

 

この結果、現在の植物園には、巨大な板根を有するフタバガキ科やカンラン科などの巨木をはじめ、多数の熱帯植物などが残っており、東洋で最大規模の熱帯植物園となっている。

天皇皇后両陛下が、ジョコ大統領の案内でどんな植物をご覧になったかは不明だが、多数の園内植物から、ほんの一部の写真をご紹介。

巨大な板根のカンラン科樹木

真綿のような実をつけるカポックの木

舞い落ちてきたカポックの実
枕などの詰め物パンヤの原料

燃えるように赤いヒスイカズラ
イリアンジャヤの炎レッド・ジェイド・バイン

ほかにも、釣鐘型のウリの実の底からグライダーのようにフワフワと滑空する翼を付けた種子を次々と飛ばすアルソミトラ、フランクフルトソーセージにそっくりの実をぶら下げる、その名もソーセージの木、白い大きな苞葉がハンカチにそっくりなハンカチの木、星の王子様で有名なバオバブ、世界最大級の臭い花ショクダイオオコンニャクの数十年ぶりの開花、1本の巨木に数えきれないくらいに群がってぶら下がっている大きなフルーツバット(コウモリ)などなど、目を閉じると園内の光景がよみがえる。

フランクフルトソーセージのような実をぶら下げるその名もソーセージの木

 

実は私、JICA生物多様性プロジェクト初代リーダーとして、ボゴールに3年間滞在したことがある。

このうち、1年以上はボゴール宮殿のすぐ裏手にある植物園内建物のオフィスに通い、昼休みには園内をよく散歩したものだ。

オフィスがあった植物園内の建物
この建物のすぐ裏がボゴール宮殿

しかしその頃は、目の前の仕事をこなすのが精一杯で、現在の東南アジアの森林破壊の元凶となっているアブラヤシの導入が、このボゴール植物園だったとは夢にも思わなかった。

 

大航海時代のプラントハンターと植物園が果たした役割、ボゴール植物園の園長が日本人だったことなど、ご興味のある方は拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生』(ちくま新書)をご覧ください。

植物園の話は、

第1章 現代に連なる略奪・独占と抵抗

1植民地と生物資源

西洋料理とコロンブスの「発見」/ヨーロッパの覇権/チョウジと東インド会社プラントハンターと植物園/日本にも来たプラントハンター/日本人が園長 ボゴール植物園物語/ゴムの都の凋落

オイルパームの話は、同じく第1章の

2熱帯林を蝕む現代生活

そのエビはどこから?/東南アジアのコーヒー栽培/インスタントコーヒーとルアックコーヒー/ほろ苦いチョコレート/日本に流入するパームオイル地球温暖化生物多様性/熱帯林の消失

 

巨樹と私たち 巨樹信仰からSDGsまで

先日、神奈川県K市で「巨樹と私たち 巨樹信仰からSDGsまで」というタイトルで生涯学習講座の講義をしてきた。

巨樹あるいは巨木は、多くの人々に畏敬の念を抱かせ、現代でもパワースポットとして老若男女が訪れる。

オオカミ信仰でも有名な秩父三峯神社にもパワースポットの巨樹があり、休日には行列ができるほどだ。

三峯神社の巨樹パワースポット

bio-journey.hatenablog.com

 

そんな巨樹と私たちとの関わりを、古代のアニミズム(自然信仰)から説き起こし、現代生活での枯葉問題など地域資産としての保全管理のあり方、NIMBYSDGsなどに至るまでを西欧と東洋の自然観なども交えながら、世界中で自ら撮影した写真を多用して講義した。

 

まずは、「巨樹とは何か!」ということで、ギネスブック登録の世界最大の樹「シャーマン将軍の木」(樹高83.8m 幹周34.9m 体積1487㎥)(米国セコイア国立公園)や日本最大幹周の「蒲生の大クス」(幹周24.2m)(鹿児島県姶良市)などの紹介から始めた。

世界最大「シャーマン将軍の木」

日本で最大幹周「蒲生の大クス」

そのほか、講義の目次は、ざっとこんなところ(講義パワーポイントの「あらすじ」より)。

◎「巨樹」の誕生
  ・巨樹とは何か!
  ・本多静六・里見信生と巨樹
  ・巨樹・巨木林調査

◎巨樹信仰の原初
  ・アニミズム
  ・巨樹信仰と行事

◎自然へのまなざし
  ・自然破壊の始まり
    ー農耕・牧畜の始まり、ギルガメッシュ叙事詩
  ・西アジア・ヨーロッパと東洋の比較
    ー「自然」の捉え方、登山、自然との対立と共生の思想

◎巨樹と私たちの生活
  ・現代にも連なる巨樹信仰
  ・現代生活での巨樹
  ・巨樹と地域社会
    ー地域資産、地域との絆

◎巨樹とSDGs
  ・SDGsとは
  ・巨樹の役割とSDGs

◎明日の巨樹へ向けて
  ・現代に蘇る巨樹信仰
  ・巨樹を心に
  ・自然観・環境倫理の変遷と巨樹

◎【付録】全国巨樹・巨木林の会

 

内容は追って少しずつこのブログでも紹介したい。

いずれにしろ、地球上で最大・最長寿の生命体である「巨樹」

ひとりでも多くの方に関心を持っていただき、地域に存することに愛着と誇りを持っていただきたいとの願いを込めて、講義を終了した次第。

 

覚書程度の中身がない記事で失礼します。

 

毎度で恐縮だが、講義の一部は拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)でも詳しく解説。

目次は下記ブログ記事からどうぞ。

『生物多様性を問いなおす』書評と入試問題採用 - みどりの旅路

チコちゃんに叱られないよう、雑草について考える!

先週(2023年5月19日)放映のNHK総合テレビの人気番組「チコちゃんに叱られる!」で、「雑草ってなに?」が取り上げられていた。

チコちゃんに叱られないように、雑草について考えてみたい。

目次

 

チコちゃんの答えは・・・

「雑草ってなに?」のお答えは、「望まないところに生えているすべての草」とか。

私のブログに興味を持っていただいている読者の方々には、とっくにお分かりのことだろうと思う。

 

良いものと悪いもの?

前回記事「坂本龍一 街頭音採録の背後には」で、故 坂本龍一氏が、「人間は勝手に、良い音と悪い音に分けている。公平に音を聴いた方が良い」と語っていたことを紹介した。

 

bio-journey.hatenablog.com

 

これに関連して、拙著『生物多様性を問いなおす』(ちくま新書)からの「害虫と益虫(害獣や雑草とそうでないものなども)の線引きは、人間の一方的な価値判断であり、それも現時点でのものだ。」との私の考えも紹介した。

 

そう、チコちゃんの答えのとおり!

雑草(害虫なども)は、人間が勝手に役に立たないと考えたり、邪魔だと考えたりしているにすぎないのだ。

そして番組出演者が質問していたが、「同じ草でも、あるところでは雑草で、違うところに生えていたら雑草でなくなることがあるの?」という疑問が当然のごとく湧いてくる。

そのとおり!

同じ草でも、きれいな花が咲くからといって庭に植えていた植物が、繁茂しすぎて邪魔になり、突然に雑草として扱われてしまうことがあるのは、身に覚えのある方も多いだろう。

 

ドクダミは雑草?薬草?

今は盛りに白い花が咲いているドクダミも、畑や庭、空き地、道端などでは雑草として扱われることが多い。

でも、ドクダミは名無しの雑草ではなく、ちゃんと名前を覚えられているからまだましか?

それもそのはず、ドクダミの独特の臭いの元となるデカノイルアセトアルデヒド精油成分には殺菌作用もあり、化膿止めや皮膚炎などに効果があるとされている。

ほかにも利尿作用や便秘改善効果、血圧安定効果などもあり、「ドクダミ茶」としても古くから利用されてきた。

江戸時代に貝原益軒の著書である本草学の『大和本草』や寺島良安の類書(百科事典)『和漢三才図絵』などにも薬草としての記載がある。

現在でも、れっきとした薬草で、厚生労働省が発行する「日本薬局方」に「十薬」という生薬名で記載されている。

嫌われもののドクダミは薬草にもなる

 

雑草だけではない!

害虫の蚊やハエも、役に立つことはあるのだ。

ハエの幼虫ウジが化膿して壊死した傷口を食べて、傷の回復を早めることから、チンギス・ハーンが負傷兵士手当のために大量のウジを戦場に運んだり、現代の病院でも使用されていることは、上記の拙著でも紹介したところだ(第3章 便益と倫理を問いなおす  第2節 生物絶滅と人間、「眠れぬ夜にカの根絶を考える」参照)。

 

多様性と多面性

こうした人間の役に立つかどうか、の前に、害虫や雑草たちも、自然界ではなくてはならない存在でもある。

人間に望まれるかどうか?

そんなの関係ないっ!

蚊やハエが鳥や魚の餌にもなって生態系を支えているのは、わかりやすい例だ。

 

こうして、あらゆる生物が他の生物と関わり合いながら自然界(生態系)で生きていることこそが、「生物多様性」なのだ。

これは、本ブログの主題のひとつだ。

 

一方で、前回ブログでも拙著から引用したとおり、「(害虫など)この線引きは、科学技術の進展、生活様式(ライフスタイル)の変化、さらには倫理観の変化などによって、いつ反転してしまうかもわからない」。

この多くの個の存在を認める「多様性」も大事だけれども、ひとつの個も角度によって(見方によって)さまざまな価値や意味を持つ「多面性」(多義性など)も大事かと思う。

 

このことについても、後日考えてみたい。

多様性と多面性は、自然界・生物だけではなく、人間社会でも真剣に考えてみる必要があるだろう。

 

拙著目次は下記記事から

bio-journey.hatenablog.com