みどりの旅路

実務と研究から自然と文化をたどる共生論・多様性論

『生物多様性を問いなおす』書評と入試問題採用

ブログを書いていると、正直なところ読者の反応が気になる。

私はこのブログ以外のいわゆるSNSはやっていないが、読者の皆さんの中には多くのSNSを駆使している方も多いことだろう。そして、バズることを期待している方も多いことだろう。

私も、このブログのスタート「ブログ再開の辞」で書いたように、ブログができるだけ多くの皆さんにご覧いただけることを期待しているのも事実だ。

そして、「生物多様性」ということが一人でも多くの方の目に留まり、関心を持っていただき、理解されることを・・・

誰でも、自分の仕事や振る舞いを評価してほしいし、他人の目も気になるものだ。

私も然り・・・・

 

目次

 

そこで、拙著『生物多様性を問いなおす 世界・自然・未来との共生とSDGs』(ちくま新書)の評判(書評)をググってみた。

生物多様性を問いなおす』書評

出版(2021年1月)からしばらくして、出版社編集者から書評の掲載されている新聞や雑誌のコピーが届いた。

その中に、毎日新聞社が発行するビジネス誌週刊エコノミスト(2021年3月12日号)「話題の本」欄の書評もあった。

「・・・多様な生物の存続が不可欠と著者は論ずる。先進国が途上国の生物資源を収奪してきた歴史も詳述している。・・・ディテールがよく調べられていて面白い。」との評でホッと胸を撫で下ろした。

weekly-economist.mainichi.jp

書籍の評判といえば、ご存知アマゾンには五つ星の評価とレビューがある。

また、読書の記録・管理のweb 読書メーター(bookmeter)でも11人(2023/02/19現在)の方が感想・レビューを投稿してくださっている。

bookmeter.com

これまた、いずれもご好評をいただき安堵しているところ。

 

調べてみると他にも、「はてなブログ」を含めて何人かの方が拙著を紹介・書評してくださっていた。

全てを調べ尽くしたわけではないが、感謝を込めて書評記事をいくつか紹介させていただく。

 

Yuma Yasueさん

「わかりやすいだけでなくて、政治的な利害や宗教観念が見え隠れする議論の場で「地球のため」という大義を通すことの苦労や葛藤に触れている文体が良かった。」

note.com

fukusuke55さんの「本と散歩と・・・」

「私の頭の中にぐるぐる巡っていたパラドクスが本書で整理されました。「解決」とは違う感覚。「気づくことができてよかった」と心から思いました。・・・「日々を大事に生きよう」と、なぜか哲学的な思いに溢れた読書体験でした。」

fukusuke55.livedoor.blog

内野知樹さんの「内野日誌」

「強国が世界中に進出し、略奪し、支配し、それによる現在まで続く対立、国立公園における先住民への非人道的扱いからの復権、ゆたから自然を壊さない共存、人類はどのように自然と関わってきたのか、何をしてしまったのか、共生は可能なのか、などこれまでの歴史とこれからのことを学ぶことができる。」

tomokiuchino.blogspot.com

wsfpq577さん

「やや日本史を「自然との共生」に引きつけすぎにもみえるが、エコツーリズム・国際平和公園・持続可能な開発援助などさまざまな論点が紹介され、コスパは高い。」

wsfpq577.hatenablog.com

nakaさん
「この本のタイトルを見た瞬間手に取り、購入しました。・・・・人間と自然の共生【相利共生】がSDGs達成に向けて大切であり、生物多様性を問い直すべきだと。」

note.com

しのジャッキー(篠崎裕介)さん

「これまで自分で調べていたTNFDとかの文脈だと、以下みたいに、グローバルのリスクだよね、という側面からの知識が主でした。一方で、本書から得られた視点は、「高い生物多様性資本を持つ国(なかでも特に発展途上国)」vs「生物多様性の資本を多く持たない国(特に先進国)やグローバル企業」という構図でした。」

note.com

「人類もその一員である生物圏全体の進化の可能性を内包した生物基盤の保全無くして人類存続はありえない。これらを統合した第3のアプローチが求められるとして、この全体像を以下のようにまとめられていて、全体が俯瞰でき助かりました。」

note.com

 

(上記の引用は、各ブログ書評からの一部)

 皆様、ありがとうございます!!

 

他にもたくさんの方からブログでご紹介いただいているかと思います。

見落としもあるかと思いますので、ご紹介いただければ幸いです。

多くの方々により好意的な評価をいただくのは、著者としても大変励みになります。

 

入試問題にも採用!

書評だけではなく、大学や公立の図書館の環境関係図書リストにも掲載されていた。

 

さらに、「ゆめほたる環境読書感想文コンクール2022」の中学生の部の推奨図書にもなっていた。

 

それだけではない!

 

日本体育大学ほかの大学や茨城県立高校など高校、そして中学までもの2022年入学試験の国語の問題文にも採用・出題されていた。

もちろん入試問題作成のたびに著者に連絡があるわけではない(事前に連絡したら、入試問題がバレてしまうからね)。入試問題として無許可利用するのは、著作権法上の例外規定のようだ。

 

しかし、学習教材関連出版社が「入試過去問問題集」を出版する際には、著者の掲載許可が必要となるので、著者の知るところとなるというわけだ。

 

入試問題に採用!

それも、著書内容に関連した生物科や社会科の科目ではなく、国語科の問題というのが驚きだった。

 

文章を生業とする小説家以外にも、物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦のエッセイなどは、国語の教科書や問題文として採用されていることで有名だ。

 

拙著がそれらの偉人たちと同レベルとは思えないが、実際に出題された入試問題文を手に取って見ると、なんとなく頬が緩む気がするのも事実だ。

 

(以下、2023/3/1追記)

書籍の概要

生物多様性を問いなおす』(ちくま新書

著者: 高橋 進
発行所:筑摩書房 (2021年1月刊) ちくま新書(1542) 286ページ  
価格:880円(税込968円)

概要:

自然共生社会の実現やSDGsを見据え、将来世代に引き継ぐべき 「三つの共生」とは?大航海時代以降の植民地・帝国主義時代か らグローバル企業などによる現代のバイオテクノロジーの時代ま での生物資源をめぐる先進国・途上国という構図や国立公園で生 じる軋轢や地域社会との関係から、地球公共財をめぐる収奪・独 占という利益第一主義を脱し、相利共生を実現する構図を示す。

【目次(構成)】

プロローグ 混乱の中での問いかけ

第一章 現代に連なる略奪・独占と抵抗
1 植民地と生物資源
西洋料理とコロンブスの「発見」/ヨーロッパの覇権/チョウジと東インド会社/プラントハンターと植物園/日本にも来たプラントハンター/日本人が園長―ボゴール植物園物語/ゴムの都の凋落
2 熱帯林を蝕む現代生活
そのエビはどこから?/東南アジアのコーヒー栽培/インスタントコーヒーとルアックコーヒー/ほろ苦いチョコレート/日本に流入するパームオイル/地球温暖化生物多様性/熱帯林の消失
3 先進国・グローバル企業と途上国の対立
先住民の知恵とバイオテクノロジー/グローバル企業と生物帝国主義/搾取か利益還元か/農業革命と緑の革命/品種改良と遺伝子組換え/バイオテクノロジー企業の一極支配/途上国と先進国の攻防/生物多様性条約/遺伝子組換え生物の安全性をめぐって/名古屋議定書=生物の遺伝資源利用の国際的ルール/ポスト愛知目標からSDGsへ

第二章 地域社会における軋轢と協調
1 先住民の追放と復権
放逐された人々/保護地域の発生/国立公園の誕生と拡散/地域社会との軋轢と協調/先住民への土地返還/排除から協働へ/日本の国立公園は?
2 地域社会と観光
植民地とサファリ観光/エコツーリズムの誕生/エコツーリズムと地域振興
3 植民地の残影から脱却するために
インドネシアの国立公園/地域社会と協働管理の胎動/多様な管理実態/エコツーリズムと地域住民

第三章 便益と倫理を問いなおす
1 生きものとの生活と信仰
オオカミ信仰/駆逐か共生か/米国の捕鯨と小笠原/捕鯨をめぐる文化と倫理/もののけ姫―森の生きものと人間
2 生物絶滅と人間
アイルランドのジャガイモ飢饉/第六の大量絶滅/眠れぬ夜にカの根絶を考える/生物多様性の誕生/キーワードは変遷する/生物多様性が必要な理由(わけ)/絶滅生物は、炭鉱カナリアでありリベット一つである

第四章 未来との共生は可能か
1 過去から次世代への継承
自然の聖地/世界遺産富士山/植物名と山岳信仰/現代に蘇る聖なる山/国境を越えた国際平和公園/悠久の時を生きる巨樹/巨樹―未来への継承
2 持続可能な開発援助とSDGs
地域住民と連携した熱帯林研究/持続可能な国際開発援助/コスタリカの挑戦/SDGsの系譜/「環境の炎」が「開発の波」に打ち消される/生物多様性とSDGs

終 章 ボーダーを超えた三つの「共生」
世界・自然・未来との共生を目指して/生物多様性保全の二つのアプローチ/第三のアプローチ/「全地球的」問題か、「一地域の」問題か/「資源ナショナリズム」か、「地球公共財」か/生きとし生けるものへの眼差しの変化/人間は自然の「支配者」ではなく、「一員」である/三つの共生

エピローグ 幸せの国から

参考文献